長浜浩明『日本人ルーツの謎を解く』

知人に薦められて、次の本を読んでみました。

 

長浜浩明『日本人ルーツの謎を解く』(展転社、2010年)

 

著者は、考古学者でも歴史学者でもなく、建築家です。考古学、分子人類学、言語学などの成果を科学的、論理的に追及して、日本人のルーツの実像に迫ります。プラントオパール分析法、加速器質量分析計、ミトコンドリアDNA研究、Y染色体分析などの成果に基づき、この道の権威者の見解に囚われることなく、「データをして語らしめ」ているようです。

 

著者の主張は、学校の教科書に書いてある見解と大きく異なるところがあります。素人の私にはすべてが真実かどうかは判りませんが、とても興味深い内容です。

 

以下に、著者の主張で印象に残った事項を記してみます。

 日本では、3~4万年前の刃の部分が研磨された局部磨製石斧(世界最古)を発見され、1万6千年前には土器(世界最古)を造られ、9千年前には漆器(世界最古)を造られていたことが確認されている。

 

木造建築では、精巧な木組みを用いた4千5百年前の高床式建物が出土している。また、海上交通では、神津島産の黒曜石を黒潮の乗り切り八丈島に運ぶだけの航海術をもっていた。

 

米作りは、日本では、6千年前には陸稲が栽培されており、3千年前には水田稲作が行われていたが、両種は並行栽培されていた。「弥生時代に渡来人が水田稲作をもたらした」という説はありえない。

 

ミトコンドリアDNA研究やY染色体分析の成果によると、日本人の主な祖先は、1万年以上に亘り日本列島の主人公であり続けた縄文時代から人たちだった。「日本人の祖先は弥生時代に大陸や朝鮮半島から流れ込んできた」という説は成立しえない。

 

日本語は、約5千年前に誕生した。縄文以前の遠い時代にツングース語を話す人々が北方から日本列島を南下し、オーストロネシア語を話す人々が南方から列島を北上した。両者の間の様々な交流の中で、言語的混合が行われた。

 

縄文時代以降、日本列島において大きな民族的、言語的交替はなかった。つまり、外部から言語の交替を強いるような支配者集団の渡来はなかった。

 

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