相続分なきことの証明書が送られてきたとき

最近、立て続けに、次のような相談がありました。

 

地方に住んでいる父がなくなりました。しばらくすると、突然、兄から左のような書類が郵送されてきました。「署名・押印し、印鑑証明書を添えて返送してください。」と書いてあります。この書類はどのように取り扱えばよいのでしょうか?

 

この書類は、「相続分なきことの証明書」とか「特別受益証明書」とか呼ばれるもので、相続登記などで使用されることがあります。遺産分割協議書の代わりに使用されます。

 

この書類は、他の共同相続人に遺産の全部を帰属させることになるので、「事実上の相続放棄」をするための書類といえます。

 

この書類は、次のような民法の規定を根拠としています。

 

第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

 

◆遺産を承継する意思がなく、相続手続きに係わりたくない場合には

 

被相続人に借財がないことが明らかであり、かつ、この書類を郵送してきた相続人が信頼できるときは、この書類に署名・押印し印鑑証明書を添えて返送しても差し支えないと考えます。

 

被相続人に借財があるとき若しくは不明であるとき、または、この書類を郵送してきた相続人が信頼できるか不明のときは、この書類は使用せず、家庭裁判所で「正式な相続放棄」の手続きを行うのが安心だと考えます。後々債権者から請求されないように。

 

 民法の規定どおり遺産を承継したい場合には

 

 この書類に記載している内容が事実かどうか判断するためには、次の3つの事項を確認しなければなりません。

① あなたは被相続人から贈与を受けていたか?

② その贈与は民法903条1項に規定する特別受益に該当するか?

③ その特別受益が相続分の価額以上であるか?

 

上記①と②とは、自分で調べれば、明らかになると思います。しかし、上記③については、「相続人の調査」や「相続財産の調査」を行わないと、明らかになりません。

 

一般に、相続手続きは、次のようなステップを踏んで行われます(詳細はこちらから)。

⑴ 遺言書の有無を確認

⑵ 相続人の調査

⑶ 相続財産の調査

⑷ 相続方法の決定

⑸ 遺産分割協議

⑹ 登記・名義変更・換価

 

この書類に署名・押印するのは、上記⑸のステップです。

 

特段の事情がない限り、直ぐには「相続分なきことの証明書」に署名・押印しないで、上記の⑴~⑶の結果を確認した後、判断するのがよいと考えます。

 

※ブログランキングに参加しています。「人気ブログランキング」および「にほんブログ村」のクリ

 ックをお願いします。

※ブログの記事の一覧は「サイトマップ」にあります。

遠藤司法書士事務所

川崎市中原区木月四丁目6番7-206号

 

TEL:044-434-7252

(受付時間:9~17時)

 

休業日

土曜日・日曜日・祝祭日

 

対象地域

川崎市(中原区、高津区、宮前区、多摩区、麻生区、幸区、川崎区)、横浜市(港北区、都筑区、青葉区、鶴見区、緑区、神奈川区、西区)、東京都(大田区、世田谷区、目黒区、品川区、港区、渋谷区、中央区、千代田区、町田市、多摩市、稲城市)

お気軽にご相談ください