相続登記の申請に当たっては、「対象不動産の登記名義人」と「被相続人」とが同一人であることを証明する必要があります。
この証明のため、「登記簿上の名義人の住所」と「被相続人の最後の住所」との一致を証明しなければなりません。この「被相続人の最後の住所」を証する書面が、住民票の写し又は戸籍の附票の写しです。ただし、登記簿上の住所と本籍とが一致する場合には、これらの書面は必要ありません。
被相続人が亡くなってから何年も経過した後、相続登記をするという事案が連続してありました。例えば、次のようなケースです。
Aの父は、10年前に亡くなり、母は7年前に亡くなりました。両親の子は、Aと妹との2人です。Aも妹も結婚して独立しています。両親が住んでいた自宅は、空家で、登記は父名義のままです。このたび、この自宅(土地・建物)について、遺産分割協議書に基づき、A名義に相続登記をしようとしています。 |
「被相続人の最後の住所」を証する書面は、市役所等で取得できませんでした。
引っ越し、死亡等で住民票の中に誰も残らなくなった場合、住民票の除票が作成されます。この住民票の除票は、作成後5年が保存期間です。5年が経過すると住民票の除票の写しは取得できません。
また、死亡等の届出により戸籍に誰もいなくなったり、本籍地以外の市区町村に転籍して戸籍が除籍となった場合には、戸籍の附票も除附票となります。この戸籍の除附票も、5年が保存期間です。
Aの父の住民票は、母が死亡したとき、住民票の除票が作成されたが、それから7年が経過したので、Aの父について住民票の除票の写しは取得できません。また、Aの父の戸籍は、母が死亡したとき、誰もいなくなり、附票が除附票になったが、それから7年が経過したので、除附票の写しは取得できません。
要するに、Aは、「登記簿上の名義人の住所」と「被相続人の最後の住所」とが一致することを証明できません。
このような場合、手間隙がかかります。管轄する法務局に相談し、権利証を提出するとか、相続人が上申書を提出するとかなどして、登記申請を受理して貰う必要があります。
被相続人が亡くなった後、何年も相続登記をしないことによるデメリットは色々あるが、この住民票の除票の写しや戸籍の除附票の写しを取得できなくなるというのも、そのデメリットの1つです。