先日、同じ著者の『強育論-The art of teaching without teaching』を読んだが、引き続いて、次の本を読んでみました。
宮本哲也『超強育論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2006年)
著者は、「子どもを賢く育てることの大切さとその方法」として、次のように主張します。以下に、印象に残ったところ。
子どもの学習において、先行逃げ切りは、かなりの確率で破綻する。年齢相応の概念形成というものがあるからだ。子ども自身が言葉や数に興味をもって色々に取り組む分には問題ないが、親が欲を出してさらに強引に先に進めようとすると失敗する。
算数の学力とは、計算力ではなく、思考力だ。すぐに結果を出すことを子どもに求めると、ものを考えない子(堪え性のない子)になってしまう。
「よい子」とは、管理する側にとって都合がよい子を意味する。つまりよい犬と同じ。人間の子と犬の子を同じように育てていいはずがない。人間の子は自立させなければならない。そのためには、自分なりの判断力を育てなければならない。優秀さと従順さとは両立しない。
家庭では好きなだけダラダラさせてやる。ダラダラして時間というのは充電している時間だ。家庭でダラダラさせてもらえない子は、授業中にダラダラする。
強い子に育てる一番簡単な方法は、子どもにたくさんしゃべらせることだ。どんな場面においても「あなたはどう思うの?」「どういうふうにしたいの?」と聞いてあげる。子どもは喋りながら自分の気持ちや考えを整理していく。
算数をやる目的はただ1つ、「賢くなるため」だ。「よりよく生きるため」だ。そのために必要なものは「情報を取捨選択する能力」と「条件を整理する能力」の2つ。
パズルで数自体の面白さに気づいてもらい、それから算数に移行すれば、算数嫌いな子は激減するはずだ。パズルは自分でものを考えられる人間(充実した人生を送ることができる人間)になるための最初の第一歩だ。 |
本書の後半には、「超強育論 実践編」として、著者の塾の授業の内容が、「新小3初日の授業」、「小4以降の算数の授業」、「小6後半の算数の授業」、「小6後半の国語の授業」、「小6最後の授業」に分けて、紹介してあります。以下に、印象に残ったことろ。
小3の授業は、1回90分で、パズルだけをやる。授業はそのクラスでトップの子が飽きないペースで進める。授業についていけるかどうかは、能力の問題ではなく、趣味の問題。こういうパズルに楽しく取り組めない子は教室に来ても無駄だ。
小4以降の授業は、1回150分で、パズルは使わず、算数の問題を黒板に1題ずつ出していく。カリキュラムは公表しておらず、予習は不要。テキストはない。子どもが黒板を写し取ったものがテキストだ。宿題はない。
小6後半の国語の授業は、1回90分で、推理パズルも使用する。その目的は、①文章を熟読させる、②消去法で間違いをつぶす習慣を身につける、③見直しを確実にやる、の3つ。入試の国語を解くのに、成熟度や感性は必要ない。算数と同様、論理的に解けばよい。 |